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Cabin & Garage について

最初に気が付いたのは 1990 年代。

当時、自分とおくさんは共通の趣味であるオフロードバイクを走らせるため、八ヶ岳周辺を毎月のように訪れていました。その定宿の近くで新築の工事が始まりました。基礎は完成したものの、なかなか建物の工事は捗りません、どうやら工事されているのは本職の方ではなさそうです。 余暇をやりくりしながらマイペースで作業されている様子でしたが、いつしか自分たちも工事の進み具合が気になり始め、可愛らしいギャンブレル屋根が出来上がった頃には、まるで自分たちのことのように嬉しく思いました。

ところが外見は完成したように見えたものの、いつの間にか人の気配は無くなり、建物は雑木林に埋もれるようになりました。その間に自分とおくさんは結婚し、やがて双子の息子たちが生まれました。もうオフロードバイクに乗ることはありませんでしたが、今度は家族として定宿を訪れ、その都度に朽ち果てて行く建物を眺め、胸を痛めていました。

そして 2013 年、息子たちは中学生になりました。このまま建物が朽ち果てて行く姿を見ていられない、いっそのこと、自分たちの手で再生できないだろうかと思い始めました。何度か挨拶を交わしたことはあるものの、持ち主の方の名前も分かりません。それでも何とか周辺を開発した不動産業者の方が判明し、おそるおそる連絡してみたところ、登記簿を取り寄せてくれました。

持ち主を探してみる

とりあえず登記簿に記された住所を訪ねてみましたが、すでに転居されていたようで表札には別の名前がありました。続いて名前を web 検索してみたところ、同姓同名の O 名誉教授(以下、教授)が候補にあがりました。北の方で先生をやっているという情報とも合致します。更に検索するとご自宅と思われる電話番号も判明しました。おくさんが電話してみると大正解。遠方の大学に転職となり、物件の処理に困っていたとのこと、前向きに相談しましょうとの言葉をいただく。

何度かのメールのやり取りの後、教授の東京出張に合わせてお会いしてきた。最初は緊張したものの、共通のオートバイ趣味に助けられ楽しくお話しさせていただきました。もはや建物には何の価値も無いでしょう、あくまでも土地の代金だけで結構ですとのこと。ありがとうございます。

初めて中に入る

教授の案内で中に入ってみると、2 つの天窓が消失して直下のロフト床、1F 天井、1F 床が腐っていました。教授は大変に恐縮されていましたが、こちらとしては想定内のこと。最初から床、壁、天井は剥がす予定だったので問題ありません。ただし、当分の間は抜けた床に気を付ける必要があります。教授と応急処置で天窓を塞いでから、昼食をご一緒させていただきました。

売買契約と所有権移転登記手続き

自作の登記申請書、登記原因証明情報、売買契約書、委任状を用意して、その場で署名押捺。教授のご厚意でとてもありがたい条件を許していただきました。その後、登記簿に記載された権利者住所と住民票に記載された現住所が異なり、さらに直接の移転住所でもないため、登記移転の手続きに必要な附票個人事項証明を取り寄せていただくようお願いしました。

書類を携えて長野地方法務局佐久支局の窓口へ。住所変更の分の委任状も必要とのことで出直して必要書類を再提出、無事に登記移転手続きは完了しました。

地元の大工さんと工事の打ち合わせ

寒冷地での事情を熟知している地元の大工さんに工事をお願いすることにしました。自分たちの要望としては、外壁と全体の雰囲気を残しつつ、屋根と内装を全て張り替える。構造上必要な最小限の柱だけを残して広い空間を確保、1F をリビング、2F は寝室用途にする。裏手にキッチン、トイレ、浴室を備えたガレージを増築して連結。屋外のリビングとして広いウッドデッキを設置する、などなど。基礎工事は凍結地面が溶ける春過ぎからしかできないため、設計案を練り上げる時間は充分あります。

荒れ放題だった庭をなんとかする

工事が始まるまで週末ごとに通って、伐採、枝打ち、草むしりなどの作業にかかりました。スコップ、ノコギリ、チェンソー、薪割り斧などの道具類とともに屋外用小型薪ストーブを購入し、現地に設置した組み立て式の物置に保管します。

冬季の暖房は薪ストーブだけでまかなうつもりなので、増築予定部分のカラマツは全て伐倒し、早めに薪割りをして、1 年以上乾燥させる必要があります。ということで、最初の冬用の薪だけは購入することになります。

雪が降る前に下草の処理と枝打ちなどが終わり、建物と庭の形がはっきりと見えてきました。後はひたすら薪割りをして、来々シーズンに備えます。

増改築工事始まる

春。ついに工事が始まりました。自分のような素人のイメージと図面を現実的に翻案、実行してくれる大工さんには感謝の気持ちしかありません。




足場があるうちに、外壁は家族みんなで塗装しました。

そして完成




4 カ所の窓にあった教授のおくさま作ステンドグラスは、そのまま同じ場所に設置しました。この家の大切なアイデンティティだと思ったからです。