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PROLOGUE

最初に気が付いたのは 1990 年代。

当時、自分とおくさんは共通の趣味であるオフロードバイクを走らせるため、野辺山周辺を毎月のように訪れていました。その定宿の近くで新築の工事が始まりました。基礎は完成したものの、なかなか建物の工事は捗りません、どうやら工事されているのは本職の方ではなさそうです。余暇をやりくりしながらマイペースで作業されている様子でしたが、いつしか自分たちも工事の進み具合が気になり始め、可愛らしいギャンブレル屋根が出来上がった頃には、まるで自分たちのことのように嬉しく思いました。

ところが外見は完成したように見えたものの、いつの間にか人の気配は無くなり、建物は雑木林に埋もれるようになりました。その間に自分とおくさんは結婚し、やがて双子の息子たちが生まれました。もうオフロードバイクに乗ることはありませんでしたが、家族として野辺山を訪れ、その都度に朽ち果てて行く建物を眺め、胸を痛めていました。

そして 2013 年、息子たちは中学生。このまま建物が朽ち果てて行く姿を見ていられない、いっその事、自分たちの手で再生できないだろうかと思い始めました。最初は夢のような妄想話のつもりでした、でも、おくさんの決意は本物でした。何度か挨拶を交わしたことはあるものの、持ち主の方の名前も分かりません。それでも何とか周辺を開発した不動産業者の方が判明し、おそるおそる連絡してみることにしました。

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